はじめに
心不全は、医療費や生活費の負担が大きくなりやすい病気です。
しかし、公的制度や給付金を正しく利用すれば、自己負担を大幅に減らすことができます。
本記事では 「医療費の目安」「使える制度」「もらえる給付金」 を、具体例を交えてわかりやすく解説します。
心不全と医療費の実態|入院・外来でかかるお金
厚労省の調査では心不全の入院費用は、1回につき 30〜60万円程度 が目安です。
ただし治療内容や入院期間によっては、これ以上かかる場合もあります。
さらに心不全は 1年以内に30〜40%の方が再入院する と報告されており、医療費がかさみやすいのが特徴です。
外来通院でも、薬代や検査費で毎月数千円〜1万円以上かかることが多いです。
臨床の現場でも「治療費が生活の大きな負担になっている」と悩まれる方は少なくありません。
👉 費用の目安を知っておくことで、急な出費にも備えることができます。
高額療養費制度|心不全患者の自己負担を軽減
制度の対象
- 公的医療保険(健康保険・国民健康保険など)に加入している方が対象です。
- 1か月に高額な医療費がかかった場合。 ※差額ベッド代などの自己負担に含まれる費用は別です。
モデルケース
- 60歳男性・年収500万円(区分ウ)
- 心不全で14日間入院し、医療費が50万円かかった場合
👉 自己負担上限は次の計算式で求められます。
80,100円+(医療費-267,000円)×1%
= 80,100円+(500,000円-267,000円)×1%
= 80,100円+2,330円
= 約82,430円
つまり、医療費が50万円かかっても実際の窓口負担は 約8.2万円 に抑えられます。
※ただし、食事療養費や差額ベッド代は対象外のため8.2万円+αとなります。
👉 高額療養費制度とは、「医療費が高くても払えない」という不安を和らげ、安心して治療に専念できる仕組みです。
心不全と障害年金|働けないときに受け取れるお金
心不全が重症化すると、条件を満たせば障害年金を受け取ることができます。
制度の対象
- 初診日に公的年金に加入していること(国民年金・厚生年金)
- 障害認定日に、一定以上の症状があること
- 保険料を一定期間納めていること 👉 つまり「年金の支払いが未納だと受けられない可能性がある」ということです。
認定基準の一例
- NYHA分類(心不全の重症度を4段階で評価する基準)がⅢ度〜Ⅳ度(重度〜最重度の状態)
- 医師の診断書で「日常生活や労働が著しく制限されている」と認められる場合 ※実際の認定は「心機能評価+日常生活制限の程度」で判断されるため、あくまで目安としてお考えください。
支給額の目安
- 国民年金(2級):年約78万円(令和6年度基準)
- 厚生年金:収入や加入年数に応じて上乗せあり
👉 「働けなくなっても生活を守る仕組みがある」と知っておくことが大切です。
傷病手当金|治療で休職したときの生活補償
会社員や公務員で健康保険に加入している方は、休職中に傷病手当金を受け取れます。
- 支給額:給与の約3分の2
- 支給期間:最長1年6か月
実際に、私が関わった患者さんの中には長期入院中に傷病手当金を利用し、生活を維持できた方もいました。
👉 無理に働き続けず、安心して治療に専念できる環境を整えられます。
心不全と介護保険|在宅生活を支える制度
- 65歳以上の方は、原則としてすべて介護保険の対象となります。
- 40〜64歳の方も、心不全は「特定疾病」に含まれるため条件を満たせば利用可能
利用できるサービス:訪問看護、デイサービス、福祉用具レンタルなど
自己負担は1〜3割に抑えられます。
ご家族の介護負担も軽減され「安心して自宅で過ごせる」と話す方は多いです。
👉 ご家族も一緒に、介護サービスの活用を検討しましょう。
医療費控除とその他の支援制度
年間の医療費が 総所得金額の5%または10万円の少ない方の金額を超えた場合、医療費控除を受けられます。
対象になるのは、薬代だけでなく 通院にかかった交通費や市販薬 も含まれます。
さらに自治体によっては、独自の医療費助成や福祉手当が設けられている場合もあります。
実際に「市の助成を利用して自己負担がほとんどなくなった」という例もありました。
👉 制度を知っておくことが、生活の安心につながります。
まとめ|心不全とお金の不安は制度利用で軽減できる
心不全は医療費の負担が大きい病気ですが、公的制度を活用すれば自己負担を大きく減らすことができます。
「高額療養費」「障害年金」「傷病手当金」などの制度は、知らないと損をするものです。
👉 ご家族と一緒に制度を確認し、安心して生活を続けていきましょう。
参考文献
- 厚生労働省「医療給付実態調査」
- 全国健康保険協会「高額療養費制度」「傷病手当金」
- 日本年金機構「障害年金制度」
- 国税庁「医療費控除について」


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