呼吸器リハビリは、慢性呼吸器疾患や肺炎などの患者さんにとって、生活の質を大きく左右する重要な治療のひとつです。
しかし、現場で実際に関わってみると、その重要性に反して十分に提供できていないケースも多く存在します。
今回は、3学会合同呼吸療法認定士としての視点から、呼吸器リハビリの現場と課題についてお話しします。
呼吸器リハビリとは?その目的と対象
呼吸器リハビリは、単に肺の機能を鍛えるものではありません。呼吸筋のトレーニングや排痰、呼吸パターンの改善、運動耐容能の向上、そして心理的サポートまで含む、包括的なアプローチです。
対象は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺炎、肺切除後、心不全による呼吸機能低下など多岐にわたります。
近年は在宅酸素療法(HOT)患者さんも増えており、日常生活に直結するサポートが求められています。
現場で感じる呼吸リハビリの重要性
臨床で呼吸器リハビリを行うと、『息苦しさ』の厄介さに気づきます。痛みや痺れ以上に生命活動に 直結する体からのサインであるため、息苦しさがあることによって肉体的にも精神的にも落ち込みやすいからです。
そこで僕たちは、まず患者さんができることから始めます。座ることができれば、座る時間を増やしたり、座りながらできる運動を一緒にしていきます。その患者さんに合わせて徐々にできることを増やし、退院する頃には日常生活が送れるような状態へ戻れるように、リハビリやセルフケア(呼吸法、排痰方)の指導を行います。
「やれば変わる」とわかるだけで患者さんの表情は明るくなりますし、日々リハビリを行う僕自身のモチベーションが上がりました。
直面する現場の課題
一方で、呼吸器リハビリの重要性が認識されていても、実際には以下の課題があります。
- 提供できる時間と人員の不足
急性期病院では退院までの日数が短く、十分な回数の介入ができない。 - 専門知識を持つスタッフの偏在
呼吸器リハビリに詳しい理学療法士や作業療法士、看護師が限られている。 - 在宅との橋渡しの弱さ
退院後に呼吸器リハビリを継続できる施設や仕組みが地域によって差がある。
課題を乗り越えるために必要なこと
僕が思う改善の方向性は次の通りです。
- 早期介入と多職種連携
医師・看護師・リハスタッフが早期から退院に向けた計画を共有すること。 - 患者・家族への教育
自宅でも続けられる呼吸法や運動方法を退院前にしっかり指導する。 - 地域連携の強化
在宅医療スタッフへ呼吸器リハビリの内容について情報提供をする。
まとめとメッセージ
呼吸器リハビリは、患者さんの生活の質を大きく変える可能性を持つアプローチです。
しかし、現場では時間・人員・地域差という課題がまだ多く残っています。
僕は、3学会合同呼吸療法認定士として、この分野の重要性を広め、現場と地域をつなぐ役割を果たしていきたいと考えています。
少しでも「楽に生活できる時間」を増やせるよう、これからも活動を続けていきます。
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