はじめに
心不全で入退院を繰り返すと、「自宅での療養が大変」「家族の負担が大きい」と感じる方は少なくありません。
そんなときに活用できるのが 介護保険制度 です。
介護保険では、心不全も 特定疾病 に含まれるため、40歳以上であれば利用できます。
この記事では、介護保険を利用できる条件や流れ、在宅サービスの内容、費用負担の目安をわかりやすく解説します。
介護保険とは?
介護保険は、病気や加齢で介護が必要になったときに、介護サービスを 自己負担1〜3割 で利用できる仕組みです。
- 原則65歳以上が対象
- 40〜64歳でも「特定疾病」があれば利用可能
心不全はその特定疾病のひとつに含まれるため、比較的若い方でも条件を満たせばサービスを受けられます。
👉 年齢にかかわらず、心不全で生活が不安定なら「対象外かも」と思わずに一度相談してみましょう。
介護保険を利用するための流れ
利用までの流れ
介護保険は申請してすぐに使えるわけではありません。利用までには およそ1か月 ほどかかります。
- 申請:市区町村の窓口で「要介護認定」を申請
- 認定調査:職員が訪問し、心身の状態を調査
- 要介護度の決定:「要支援1〜2」「要介護1〜5」に区分
- ケアプラン作成:ケアマネジャーと相談して利用サービスを決定
- サービス開始:訪問看護やデイサービスなどを利用開始
👉 申請から利用まで時間がかかるため、早めの準備をおすすめします。
要支援と要介護の目安
介護保険を利用するには「要介護認定(介護の必要度を判定する仕組み)」を受ける必要があります。
目安は以下のとおりです(あくまで一般的なイメージです)。
- 要支援1・2:掃除や買い物など一部の日常生活に手助けが必要
- 要介護1・2:階段の昇降や長い歩行が難しく、入浴や着替えなど一部で介助が必要
- 要介護3・4:日常生活の多くで介助が必要。トイレや移動に常に見守りや介助が必要
- 要介護5:ほぼ寝たきりで、全般的に介助が必要
👉 ご自身やご家族の生活状況に照らし合わせて考えると、申請のきっかけになります。
利用できるサービス(心不全の在宅療養を支える仕組み)
介護保険で使える在宅サービスは多岐にわたります。心不全の患者さんに特に役立つのは以下です。介護保険で使える在宅サービスは多岐にわたります。心不全の患者さんに特に役立つのは以下です。
- 訪問看護:体調管理、服薬チェック、心不全悪化の早期発見
- 訪問リハビリ:体力低下を防ぐ運動や生活動作練習
- デイサービス(通所介護):入浴・食事・リハビリを日中に受けられる
- 福祉用具レンタル:ベッドや歩行器などを低価格で借りられる
- 訪問介護(ヘルパー):掃除や買い物、入浴介助など生活支援
👉 サービスの組み合わせ方は人それぞれ。ケアマネジャーに気軽に相談してみましょう。
介護度による費用負担例
介護保険サービスの自己負担は 原則1割(所得に応じて2〜3割) です。
例えば、要介護2の方が以下のサービスを利用した場合を考えてみましょう。
- 訪問看護(週2回)
- デイサービス(週1回)
- 福祉用具レンタル
→ サービス合計額:約 10万円(月額)
要介護2の支給限度額(約20万円)の範囲内なので、実際の支払いは 1割負担の1万円 です。
👉 10万円分の支援を受けても実質1万円。負担が大きく減ることが実感できます。
家族の負担軽減効果
介護保険を使う大きなメリットは、家族の心身の負担を減らせることです。
心不全は症状が変動しやすく、「今日は元気でも翌日は強い息切れ」ということも珍しくありません。
訪問看護やデイサービスを利用すれば、家族がずっと見守らなくても安心できます。
臨床でも「サービスを取り入れてから家族が休める時間ができた」という声を多く聞きます。
👉 介護はチームで取り組むもの。家族だけで抱え込まず、外部のサポートを頼って大丈夫です。
まとめ|介護保険を活用して心不全と在宅生活を両立
- 心不全は特定疾病に含まれるため、40歳以上であれば介護保険が利用可能
- 要介護認定を受けることで、訪問看護やデイサービスなど多様な支援が受けられる
- 自己負担は原則1割。10万円分のサービスを利用しても支払いは1万円程度
- 家族の負担を軽減し、安心して在宅療養を続けやすくなる
👉 まずは市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してみましょう。制度を知ることが安心への第一歩です。
参考文献
- 厚生労働省:介護保険制度の概要
- 厚生労働省:区分支給限度基準額
- 全国健康保険協会(協会けんぽ):介護保険の特定疾病について
- 厚生労働省:介護保険サービスと利用者負担

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