【はじめに】入浴中の血圧は“想像以上に揺れ動く
お風呂に入ると「ホッ」とする瞬間がありますよね。
しかし、その裏で血圧は大きく上下していることをご存じでしょうか。
冷えた脱衣所から浴槽に入るわずか数十秒で、
血圧は 「急上昇 → 急低下」 というジェットコースターのような動きをします。
この血圧変動は、特に 高齢者 や 心疾患をお持ちの方 にとって重大なリスクです。
この記事では、実際の研究データを使いながら、
入浴時に血圧がどのように変化するのか をわかりやすく解説します。
この記事は『入浴で血圧がどう変化するのか?』『安全な湯温や入浴時間は?』を知りたい方に向けて書いています。
脱衣所が最初の危険ポイント|冷えは血圧を一気に上げる
寒い脱衣所では、皮膚の血管が急に収縮し、血圧が上がります。
● 研究データ
- Kanda(1996)
冬の脱衣所 → 浴室へ移動しただけで 収縮期血圧が上昇 - 東京都健康長寿医療センター(近年)
冬場の浴室事故は「寒い場所から温かい場所への移動」が引き金になることが多い
高齢者は自律神経の反応が遅いため、
血圧が急に上がりやすく、冷えが最初の危険ポイント となります。
湯に入る瞬間が“最初のピーク”|40℃と42℃で血圧変動は大きく違う
次に浴槽へ入る瞬間、血圧は さらに上昇 します。
● 研究データ
- Ono(2017)・Miwa(2020)
- 38〜40℃:血圧変動は穏やか
- 42℃:血圧が一度大きく上昇 → その後急低下 - Tai(2024)
41℃以上の湯温で:
- 収縮期血圧が約10mmHg上昇- 脈拍が14〜20拍/分増加
高温は “心臓負荷が急増する温度” と理解しておくことが大切です。
入浴5分後から始まる“血圧低下”|油断しやすい時間帯
入浴後5〜10分ほど経つと、血管が広がり血圧が下がり始めます。
● 研究データ
- Miwa(2020)
- 40℃前後:血圧はゆるやかに低下
- 42℃:急低下することもある
高齢者は自律神経の調整が弱く、
血圧が下がりすぎてしまうケース が多いのも特徴です。
臨床でも
「急に気分が悪くなった」「目の前が暗くなった」
という訴えはよく見られます。
出浴時が最も危険|立ちくらみ・失神のメカニズム
浴槽から立ち上がると、血液が脚に落ちて脳への血流が一時的に低下します。
これが 起立性低血圧 です。
● 研究データ
- 鈴木(2023)
- 入浴直後・出浴直後に血圧変動が最大- 特に出浴は「倒れるリスク」が高い
さらに 心不全の方 は体液の移動に弱く、
血圧低下が急激になりやすいため特に注意が必要です。
✔ 失神 → 転倒 → 溺水
これが浴室事故の典型です。
危険になりやすい人の特徴
以下の条件がある方は、入浴時の血圧変動が大きくなりやすく危険度が上がります。
- 高齢者
- 高血圧
- 心不全(特に HFrEF)
- 糖尿病
- 脱水
- 飲酒後
- 睡眠薬・降圧薬の服用中
さらに 早坂(2016) では、
入浴前の収縮期血圧が160mmHg以上 の高齢者は入浴事故リスクが上昇すると報告しています。
研究から導く「安全な湯温と入浴時間」
🔵 安全な湯温:39〜40℃
- 血圧の上下が少ない
- 心臓への負担が軽い
🔵 入浴時間:10分以内(5〜8分が理想)
- 長湯は血圧低下 → 失神リスク増大
🔵 入浴の時間帯:夕方が最も安全
- 体温が自然に高く、循環が安定している時間帯
理学療法士がすすめる“循環にやさしい入浴法”
- 浴槽から出るときは急に立ち上がらず、ゆっくり姿勢を変える
- 入浴前に足先からのかけ湯で体を慣らす
- 脱衣所の室温を 18〜20℃ に保つ
- 入浴前後にコップ1杯の水分補給
- 家族に「今から入るね」と声をかける
- 夜遅い入浴は避ける(自律神経が不安定)
読者の方に伝えたいこと👨⚕️
入浴はただ体を清潔にするだけでなく、
その日の疲れを癒し、心を整える大切な時間です。
だからこそ、無理のない入浴方法を選ぶことは
“自分自身を大切にする行為” だと感じています。
ご家族の声かけや小さな工夫で、
大切な人の命が守られることもあります。
今日から少しずつ、取り入れられることから始めてみてください。
【まとめ】入浴の血圧変動を知ることが“命を守る対策”になる
- 入浴中の血圧は「急上昇 → 急低下」する
- 危険なのは脱衣所・湯に入る瞬間・入浴中・出浴
- 湯温は40℃以下、入浴は10分以内
- 脱衣所と浴室の温度差をなくす
- 高齢者・心疾患の方は特に注意が必要
入浴は正しく行えば、安全で心地よい健康習慣になります。
今日からできる小さな工夫で、大切な人の健康を守っていきましょう。
📚 参考文献(Suggested Format)
- Ono J, et al. Journal of Physiological Anthropology. 2017.
- Tai Y, et al. Environmental Health and Preventive Medicine. 2024.
- Miwa C, et al. Onsen Medical Science. 2020.
- 鈴木知明ほか. 日本老年医学会雑誌. 2023.
- 早坂信哉ほか. 温泉気候物理医学会雑誌. 2016.
- Kanda K, et al. Annals of Human Biology. 1996.
- Tochihara Y, et al. Journal of Physiological Anthropology. 2022.
- 東京都健康長寿医療センター研究所「高齢者の入浴事故に関するレポート」


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