心不全で疲れやすいのはなぜ?フレイル・サルコペニアとの関係を解説【理学療法士が解説】

心疾患の生活リスク

 せっかく治療を終えて退院したのに

 「前よりも疲れやすくなった」
 「歩いたり、重たい物を持ち上げたりすることが大変になった」
 
 と感じることはありませんか?

 その前より「疲れやすい」、「歩くのがしんどい」と感じる背景には…
フレイルやサルコペニアが隠れているかもしれません。

 心不全では心臓の機能低下だけでなく、フレイルとサルコペニアという体力や筋力の低下した状態と深く関わりがあり、高齢者に起こりやすいとされています。

 特に心不全の治療を終えて退院したばかりの時期は活動量が低下しやすく、筋力や体力が落ちやすい時期です。

 この記事では、患者さんとご家族に向けて退院後に気をつけたいフレイルやサルコペニアについて解説します。

この記事でわかること

・フレイルやサルコペニアとは何か?
・フレイルやサルコペニアと心不全との関係性
・入退院リスクや生活の質にどんな影響があるのか?
・自宅でできるセルフチェック方法

について詳しく解説しています。

この記事について

▶︎日本循環器学会 / 日本心不全学会合同 2025 年改訂版 心不全診療ガイドライン
基づいて、理学療法士『ゆうゆう』が監修しています。

⚠️ 医療情報に関する注意
 本サイトは医療情報の整理と解説を目的としており、特定の治療や医療行為を推奨するものではありません。症状や治療についての最終的な判断は、必ず主治医や医療機関にご相談ください。


フレイルとは?

 フレイルとは、介護が必要になる前段階の心身が弱った状態のことを指しますが、早めの対処によっては回復することも期待できます。

 フレイルには
 ・身体的フレイル:筋力や歩行能力などの身体能力の衰え
 ・精神・心理的フレイル:認知機能の低下や抑うつ状態
 ・社会的フレイル:独居、外出頻度の低下、社会的なつながりの希薄化
 ・オーラルフレイル:飲み込む能力などの口腔内の機能の低下

 などがあります。

 高齢の心不全患者さんでは、息切れや疲れやすさによって活動量が減少しやすいため、フレイルのリスクが非常に高くなります。

 特にオーラルフレイルの状態では、身体的フレイルやサルコペニア(詳細は後述)、死亡のリスクを2倍以上に高めるとの報告があり注意が必要です。


サルコペニアとは?

 サルコペニアとは、加齢や病気によって筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態です

 またサルコペニアは疲れやすさや歩きづらさの原因になることがあります。

 「最近ペットボトルの蓋が開けづらくなった」、「青信号のうちに横断歩道を渡ることが大変になった」などの日常生活の変化で気づかれることが多く、高齢の心不全患者さんでは高頻度に合併すると報告されています。

サルコペニアがあると…

  • 動くとすぐ疲れる
  • 転倒しやすくなる
  • 入院後の回復が遅れる

 といった問題が起こり、心不全の予後(その後の経過)や転倒による骨折などの悪影響を及ぼします。


なぜ心不全でフレイル・サルコペニアが起きやすいのか?

 心不全があると、次のような要因でフレイル・サルコペニアが進行しやすくなります。

  • 循環不全:全身への血流が減り、筋肉や腸の働きが低下
  • 活動量の低下:息切れや疲労感で運動量が減り、筋力が落ちる
  • 栄養障害:腸のむくみや食欲低下で栄養不足になり、筋肉量が減る
  • 慢性炎症やホルモン変化:筋肉が分解されやすく、サルコペニアが進む

 このように、心不全は「筋肉や体力を弱らせやすい病気」であり、特に高齢者ではフレイル・サルコペニアが進みやすい状態にあるのです。


フレイル・サルコペニアが心不全に与える影響

 研究では、フレイルやサルコペニアを合併した心不全患者さんは、

  • 再入院率が高い
  • 死亡率が上がる
  • 日常生活の自立度が下がる
  • 生活の質(QOL)が低下する

 と報告されています。

 つまり、心不全の治療とは心臓だけでなく「体の筋力や活力を守ること」も再入院を防ぐためには欠かせません。


自宅でできるセルフチェック

フレイルのチェック例

 ⬜︎ 半年前と比べて体重が減ってきた
 ⬜︎ 家族や友達と歩いて、遅れることが増えてきた
 ⬜︎ ペットボトルの蓋が開けづらくなった
 ⬜︎ 前よりも疲れやすくなった
 ⬜︎ 運動をする習慣がない

 体重減少や疲労感の自覚があれば「フレイルの可能性あり」3つ以上当てはまれば「フレイルの可能性が高い」とされます。

注意

 当チェック表は、健康管理の範囲でご使用ください。
 不安がある場合は自己判断せずに必ず主治医や医療機関にご相談ください。


サルコペニアのチェック例(指輪っかテスト)

 ご自宅でできる簡単な確認方法に指輪っかテストがあります。

 <方法>
 1.両手の親指と人差し指で輪を作ります
 2.利き足ではない方のふくらはぎを手で作った輪で囲みます

 <判定>
 ・指が届かない :筋肉量が保たれている可能性
 ・ちょうど囲める : 筋肉量の低下が疑われるので注意!
 ・隙間ができる : サルコペニア疑いがあります!  

注意

 当チェック表は、健康管理の範囲でご使用ください。
 不安がある場合は自己判断せずに必ず主治医や医療機関にご相談ください。


日常生活でできるフレイル、サルコペニアの予防や対策

適度な運動

 心不全患者さんには、有酸素運動(ウォーキングや軽めの自転車)と筋トレがガイドラインで推奨されています。

  • 有酸素運動会話が続けられるペース
          一般的にはBorgスケール11〜13程度の「ややきつい」
           運動強度が目安とされています              
  • 筋トレ10〜15回無理なく繰り返せる程度

 この運動強度で週2〜3回程度から始めていくことが安全で効果的とされています。 

注意

 病状によって適切な運動強度は異なるため、必ず主治医や医療機関へ相談してください。

 
 こちらの記事では「安全に運動できる運動の目安」や「運動を中止すべき危険なサイン」など安心して運動を継続するための方法について解説しています。

関連記事

✅ 心不全の方でもどのぐらいの
  運動強度なら安全か?
 中止すべき目安と危険なサインに
 ついては、こちらで解説しています。


栄養を意識した食事

 筋肉量を落とさないためにはタンパク質を摂取することが重要です。
 心不全の方は合わせて減塩に取り組まれると心不全の再発リスクを下げることが期待できます。

 ・タンパク質(肉・魚・豆類・卵・乳製品)をしっかり摂取
 ・減塩を意識しつつ、バランスよく栄養をとる      

注意

 腎臓の病気がある方は、タンパク質の摂取は病状を悪化させることがあります。
 不安がある場合は自己判断せずに必ず主治医や医療機関にご相談ください。

 心不全予防に重要な減塩と適度なタンパク質の摂取に関してはこちらの記事で解説しています。                  

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✅ 心不全予防には減塩が効果的ですが、
 適度にタンパク質を摂取することも
  重要とされています。
 この記事では、減塩と栄養バランスに
  ついて詳しく解説しています。


社会とのつながり

 ・家族や友人との会話を増やす
 ・デイサービスや地域のサロンに参加する

 社会とのつながりが減ると、活動量や食事量の低下につながりやすく、フレイルが進行しやすくなります。


睡眠・休養をしっかりとる

 ・規則正しい生活リズムを意識
 ・眠れないときは無理に横にならず、気分転換をする

 睡眠は健康増進だけでなく、心不全予防にも重要です。
 詳しくはこちらの記事で解説しています。

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✅ 睡眠は健康増進のためだけでなく、
  心不全を予防するためには重要です。 
  この記事では、「睡眠の質」について
  詳しく解説しています。


ご家族ができるサポート

 フレイルやサルコペニアへの対策は、家族の支えが大きな力になります。

 ・食事の工夫:たんぱく質を含む献立を一緒に考える
 ・運動の見守り:散歩や体操を一緒に行う
 ・記録のサポート:体重・歩行距離・食事内容を簡単に記録
 ・声かけ:「少し動けたね」とポジティブな言葉をかける


まとめ

 心不全においては、心臓の病気そのものだけでなく、
加齢に伴うフレイルやサルコペニアが再入院や生活の質に大きく影響することが分かっています。

 ・フレイルやサルコペニアは「予防・改善できる状態」
 ・日常生活での体力維持や栄養管理がとても重要
 ・ご家族と一緒に取り組むことで継続しやすくなる

 心不全と向き合ううえで、「心臓」と同じくらい「体全体の元気」を守る視点を持つことが大切です。

 フレイルやサルコペニア以外にも心不全について知りたい方はこちらの記事で心不全の概要について解説しています。

まとめ記事

✅ 「そもそも心不全って何?」という方に
  心不全の「症状」、「原因」、「寿命」、
  「治療方法」、「退院後の生活」に
  ついて、こちらの記事でまとめて
  解説しています。


参考文献

  • 日本循環器学会・日本心不全学会.2025年改訂版 心不全治療ガイドライン.2025.
  • Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus (EWGSOP2). Age Ageing. 2019.
  • Morley JE, et al. Frailty consensus: a call to action. J Am Med Dir Assoc. 2013.
  • Nishikawa H, et al. Prevalence and outcomes of sarcopenia in heart failure: Systematic review and meta-analysis. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2021.
  • Harris KM, et al. Psychological Stress in Heart Failure. Curr Heart Fail Rep. 2020.

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