僕が理学療法士として初めて担当した心不全の患者さんとの出会いは、今も忘れられない経験です。
知識も経験もなかった当時の僕は、彼女にとって適切な関わりができたとは言えません。
その経験は、深い後悔とともに、今の僕の原点になっています。
この記事では、あの時の気づきと、それをきっかけに歩んできた学びの道をお話しします。
🪷 臨床1年目、心不全の“怖さ”に直面した日
臨床に出て1年目のころ、僕が初めて循環器疾患を担当したのは、心不全を患うおばあちゃんでした。
僕はまだ心不全の病態を深く理解しておらず、「運動=良いこと」という固定観念のまま、リハビリを進めていました。
けれど、訓練の最中におばあちゃんは息苦しさを訴え、歩行訓練では足先が紫色になったりとリハビリをしている僕の方まで不安を感じるほどでした。
そのときの僕には、なぜそのような体の変化が起きるのか、よく理解できていませんでした。
当時は率直に、リハビリすることが怖かった。
「このままリハビリを進めて大丈夫なのか?」
「自分が、この人を悪くしてしまっているのではないか?」 とにかく、いろんな不安が募っていく一方でした。
🕯 急性増悪と別れ――そして残された後悔
その数日後、おばあちゃんは心不全の急性増悪で亡くなりました。
僕は、どうしようもないほどの後悔を抱きました。
- あのとき、もっと丁寧に観察していれば…
- 心不全の知識をきちんと持っていれば…
- 無理に動かそうとせず、寄り添えていれば…
その全てが、「もしも」に変わりました。
📚 後悔を力に変える ― 心リハ指導士への道
この経験をきっかけに、僕は心臓リハビリテーション指導士の資格取得を目指しました。
「もう二度と、知識がないことで後悔したくない」
そう思って、病態生理、薬物療法、運動処方、そして多職種連携の重要性を学び。
「患者さんに、少しでも安全で意味のある支援を届けたい」という思いから、循環器リハビリのスペシャリストである、心臓リハビリテーション指導士に向け一歩目を踏み出しました。
🩺 現場で学んだ、“知ること”と“寄り添うこと”の大切さ
あのおばあちゃんとの出会いを通して、僕が学んだのはただの専門知識ではありません。
- 「あえて運動を頑張らせない」を選ぶ勇気
- 観察し、考え、決める臨床判断力
- 症状の裏にある不安や苦しさに目を向ける姿勢
臨床では、“正しさ”だけでは患者からの信頼は得られない。
患者の声に耳を傾け、病態をよく観察しながら、一緒に目標に向かっていく姿勢が必要だと、彼女は教えてくれました。
💬 同じように悩む若手療法士のあなたへ
もしこの記事を読んでいるあなたが、
「これでいいのか?」「自分の判断は間違っていないか?」と迷いながら現場に立っているなら──
どうか安心してください。
僕も、同じように悩み、後悔し、そして今も迷いながら学び続けています。
大切なのは、「わからなかったことを、次につなげること」。
それが次の患者さんへの糧となり、その積み重ねがこれから出会うたくさんの 患者さんの助けになると思います。
🕊 あの時の出会いが、いまの僕の背中を押してくれている
あのおばあちゃんは、今でも僕の心の中にいます。
彼女がいなければ、今も僕は「わからないまま適当に運動をさせる理学療法士」のままで いることでしょう。
でも、あの出会いと別れがあったから、今も『病気と患者を理解しようとする理学療法士』を目指し続けています。
そしてそれは、これからも変わることのない、僕の軸です。
✍ 最後に:経験は、誰かの力になる
この文章は、あの時の自分への手紙でもあります。
そして、同じように現場で悩む人の、役に立てたらと願っています。
過去の後悔を、未来へ繋げる
臨床では自分の無力感に苛まれることが多々あります。 しかし、それを乗り越えた先で誰かの役に立てることが理学療法士のやりがいでも あると感じています。
ブログを始めたばかりで拙い文章ではありますが、ご拝読ありがとうございました。
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