心不全患者さんのための安全な運動メニュー【理学療法士が解説】

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はじめに

「心不全と診断されたけど、運動をしても大丈夫なのだろうか?」
「再発や悪化が怖くて、どう体を動かせばいいのかわからない…」

このような不安を抱える患者さんやご家族は少なくありません。
確かに心不全とは、心臓の働きが弱っている状態であり、過度な運動は病状を悪化させることがあります。
しかし、適切な方法で運動を行うことは、心不全の再発予防や生活の質の向上1)に大きく役立つことが、心不全の治療を行う上でのガイドラインでも示されています。

本記事では、理学療法士である筆者が患者さんとご家族が安心して取り組める自宅での運動メニューをわかりやすく紹介します。


心不全と運動の関係

心不全になると動けば息苦しくなるので「安静にしていたほうが良い」と考える方もいますが、   適度な運動は予後を良くする1)と多くの研究結果で出ています。

具体的には…

  • 健康関連QOLの改善1)
  • 心不全再入院の回避1)
  • 生命予後改善1)

などがあり、適切に運動をすることによって「心臓が弱っていても心不全の症状を軽減することができ、急激に悪くなることも少なくなるため、入院する回数が減って自分らしく生活を送れる」といった効果も期待できます。しかし、運動なら何でもかんでもやって良いというわけではありませんし、心不全の症状が悪化している時に運動を行うことは逆効果となります。


運動を始める前に確認すべきこと

安全に運動を行うために、必ず以下を確認してください。

  1. 医師から運動の許可が出ていること
    → 特に重要です!! 心不全で入院した直後は、主治医への確認が不可欠です。
  2. 体調のチェック
  • 強い息切れや動悸、むくみがないか
  • 胸の痛みやめまいはないか
  • 発熱や風邪症状がある日は避ける
  • 普段よりも血圧が高かったり、低かったりしないか

 → 上記の症状があったり、普段と少しでも体に異常や違和感を感じる時は、無理に運動をしない        ようにしましょう。

  1. 測定できる環境
  • 家庭用血圧計で運動前と運動後の血圧を確認しましょう。
  • 運動中も脈拍数や息切れの程度を自分で把握しておきましょう。

自宅でできる安全な運動メニュー

ウォーキング

  • 最初は 5〜10分程度 から始めましょう。                              → 歩く早さはご自分の楽なペースで歩きましょう。
  • 体調に合わせて、途中で休憩しても構いません。
  • 目安は「会話ができる程度」、「少しきついかな」ぐらいで大丈夫です。

椅子からの立ち座り運動

  • 椅子に腰かけた姿勢から立ち上がり、また座る動作を繰り返します。                    → 運動中は息をこらえないように注意しましょう。
  • 10回を1セット、1日1〜2セットから始めましょう。
  • 腰や膝、股関節が痛い時は無理せず大丈夫です。

 この運動は、足腰の筋力を維持し、転倒予防にもつながります。

踵上げ運動

  • 椅子や机につかまり、ゆっくり踵を上げ下げします。                          → 立って運動を行うことが難しい場合は、椅子に座った姿勢から踵を上げ下げしましょう。
  • 10回を1セット、1日1〜2セットが目安。

 ふくらはぎの筋肉を鍛え、血流を良くする効果があります

軽いストレッチ

  • 腕や脚をゆっくり伸ばすことで血流が良くなります。
  • 運動の前後に取り入れることで怪我を予防することができるのでおすすめです。

運動時の注意点

心不全患者さんが安全に運動を行うためには、以下の点に注意してください。

  • 医師の指示に従う
  • 退院直後は無理をしない
  • 運動中に胸の痛み、強い息切れ、めまいが出たらすぐ中止する
  • 運動は「やればやるほど良い」わけではありません
  • 週2〜3回の軽い運動でも効果があります
  • 無理に毎日行うより、継続できる範囲で習慣にすること が大切です

ご家族がサポートできること

  • 運動中に異常がないか見守る
  • 血圧や脈拍の測定を手伝う
  • 一緒にウォーキングやストレッチを行い、継続をサポートする

👍 家族の協力は患者さんの安心感につながり、運動の継続率も高まります。


まとめ

心不全と診断されても、「運動は危ないからやめたほうがいい」と考える必要はありません。
むしろ 正しい方法で行う運動は、心不全の再発予防・体力維持に欠かせない治療のひとつ です。

  • 運動を始める前に必ず医師の許可を得る
  • 体調に合わせて「無理をしない強さ」で行う
  • ご家族も一緒にサポートしながら継続する

これらを守ることで、患者さんが安心して生活を続けられるサポートになります。
不安がある場合は、医師や理学療法士に遠慮なく相談してください。

参考文献

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