はじめに
心不全は「生活習慣病の積み重ね」で起こる病気です。
高血圧・糖尿病・脂質異常症を放置すると、心臓に負担がかかり、発症や再発のリスクが高まります。
結論から言えば、この3つをまとめて予防・管理することが、心不全を防ぐ一番の近道です。
この記事では、それぞれの病気と心不全の関係、そして今日からできる生活習慣の工夫を解説します。
心不全と生活習慣病の関係
心不全は、ひとつの病気だけよりも、複数の生活習慣病が重なることで起こりやすくなります。
- 高血圧
血圧が高い状態が続くと、心臓は強く働かざるを得なくなります。すると心臓の筋肉が厚く硬くなり(=心肥大)、血液を送り出しにくくなります。 - 糖尿病
血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つき動脈硬化が進みます。また、心臓も糖の代謝異常や酸化ストレス(体のサビのようなもの)の影響で硬くなり、働きが弱まります。 - 脂質異常症(コレステロールの異常)
いわゆる「悪玉コレステロール(LDL)」が高いと動脈硬化が進み、心筋梗塞を起こしやすくなります。そこから心不全に進行するリスクもあります。
実際に、生活習慣病を3つ以上もつ人は、そうでない人に比べて心不全のリスクが数倍に高まると報告されています。
だからこそ、「まとめて対策する」ことが大切です。
高血圧と心不全予防|血圧を下げる生活習慣
血圧は「沈黙のリスク」と呼ばれるほど、自覚症状がなくても心臓に負担をかけます。
研究では、収縮期血圧を10mmHg下げるだけで心血管疾患全体のリスクが約20%減少し、心不全の予防にもつながります。
対策ポイント
- 減塩:食塩は1日6g未満を目標に。味噌汁は具だくさんにして汁を減らすと続けやすいです。
- 運動:会話できるペースのウォーキングが効果的です。
- 睡眠・ストレス管理:不眠やストレスも血圧を上げる要因になります。
臨床経験でも、毎日の血圧記録を続けている方は、自分の体調の変化に気づきやすく、再入院が少ないと感じます。
ご家族と一緒に「減塩レシピ」や「散歩習慣」に取り組みましょう。
糖尿病と心不全予防|血糖コントロールが鍵
糖尿病は『血管の老化を早める病気』とも言われます。医学的には、血糖が高い状態が続くことで動脈硬化が進みやすくなります。
対策ポイント
- 食事:主食は腹八分目に。ゆっくりよく噛むと血糖の急上昇を防げます。
- 運動:食後30分以内の軽い散歩は血糖を下げる効果があります。
- 医療連携:薬や食事管理は、主治医や管理栄養士と相談するのが大切です。
臨床では「日常的に歩く習慣」がある方は、血糖コントロールが安定しやすいと感じます。
毎日のちょっとした移動も「治療の一部」と考えてみましょう。
脂質異常症と心不全予防|コレステロール管理の工夫
脂質異常症は「動脈硬化を進める原因」となる病気です。悪玉コレステロール(LDL)が高いと心筋梗塞を起こしやすく、そこから心不全に進むリスクも高まります。
対策ポイント
- 食事:「揚げる」より「焼く・蒸す」に。
- 食品選び:青魚・大豆製品・野菜を意識。
- 禁煙:喫煙は血管を傷つける最大のリスクです。
外来でも「家族で一緒に食生活を見直した方」は、数値が改善しやすく、続けやすい印象です。
食卓の工夫を家族全員で共有しましょう。
心不全予防のために共通して大切な生活習慣
- 体重管理:1週間で2kg以上の体重増加は注意が必要です。特に心不全の既往がある方では、むくみや息切れなどの悪化サインにつながることがあります。
- 運動習慣:会話できるペースのウォーキング+軽い筋トレを無理なく続けましょう。
- 睡眠の質:短すぎる・長すぎる睡眠はリスクになります。
「一人では難しい」と感じても、ご家族や仲間と一緒なら続けやすいです。
まとめ
心不全は、高血圧・糖尿病・脂質異常症が積み重なって起こる病気です。
この3つをまとめて予防・管理することが、最大の対策になります。
今日からできることはシンプルです。
- 減塩を心がける
- 食後に歩く
- 食卓を少し工夫する
ご家族と一緒に「無理なくできること」から始めましょう。
未来の心臓を守る一歩は、毎日の小さな習慣から生まれます。
参考文献
- 日本循環器学会・日本心不全学会.心不全治療ガイドライン(2025年改訂版).2025.
- 厚生労働省.e-ヘルスネット「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp
- WHO. Global recommendations on physical activity for health. Geneva: WHO; 2010.
- Emerging Risk Factors Collaboration. Diabetes mellitus, fasting blood glucose concentration, and risk of vascular disease. Lancet. 2010.
- Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration


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