心不全予防とお酒の関係|飲酒はどこまで許される?【理学療法士が解説】

心不全予防シリーズ
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はじめに

心不全を防ぐためには、食事や薬だけでなく「お酒との付き合い方」も大切です。
結論から言えば、お酒は「少なめ・控えめ」が基本です。特に心不全を抱える方は、できるだけ控えることが望まれます。


心不全と飲酒の関係|なぜお酒が心臓に影響するのか

お酒を飲むと、体が「活動モード(交感神経優位)」になり、血圧や心拍数が一時的に上がります。これが心臓への余計な負担となります。

長期的に飲みすぎると、心臓の筋肉が弱り、心不全のリスクが高まります。
国際的な研究でも「大量飲酒は心不全の発症率を上げる」と報告されています。

臨床の現場でも、飲酒習慣がある方は息切れやむくみが悪化し、入院につながるケースをしばしば経験します。
日常的な飲酒が「心臓に余計な負担をかける」ことを意識しましょう。


心不全予防における適切な飲酒量|どこまでなら許される?

WHOや厚生労働省の指針では、1日あたり純アルコール20g未満が望ましいとされており、お酒の種類や量に換算するとわかりやすいです。

以下の量がおおよその目安です。

  • ビール:中瓶1本(500ml・5%)
  • 日本酒:1合(180ml)
  • ワイン:グラス2杯(200ml)
  • 焼酎:グラス1杯(100ml・25%)
  • チューハイ:350ml缶1本(7%)

ただし、心不全の方では、この量でも負担になることがあります
実際に「お酒を減らしただけでむくみが改善した」という患者さんも少なくありません。
ご家族と一緒に飲酒量を記録すると、無理なく管理できます。


少量の飲酒は体に良い?最新研究から考える

「赤ワインが体に良い」と耳にしたことがある方もいるでしょう。
確かに、少量の飲酒が心筋梗塞などに保護的とする研究も過去には報告されています。

しかし近年の大規模研究では「健康に良い飲酒量は存在しない」と結論づけています。
特に心不全ではリスクの方が大きいため、「少しなら良い」より「飲まない方が良い」が安全と考えられます。


心不全とアルコール性心筋症|飲みすぎが招く危険

長年にわたり大量の飲酒(純アルコール量が1日80g以上を10年以上など)を続けると、アルコール性心筋症を発症することがあります。
これは心臓の筋肉が弱って拡張し、ポンプの力が低下して心不全の原因になる病気です。

ただし、禁酒することで改善する例もあります。
臨床経験でも「お酒をやめたら息切れが軽くなった」と話す患者さんを多く見てきました。
禁酒を続けるには、ご家族の協力が大きな支えになります。


薬とお酒の飲み合わせに注意|利尿薬・抗不整脈薬との関係

心不全の治療薬とお酒は相性が良くありません。

  • 利尿薬+アルコール → 脱水や低血圧のリスク
  • 抗不整脈薬・睡眠薬+アルコール → 強い眠気やふらつき、脈の乱れ

臨床でも「薬を飲んだ後にお酒を飲んで体調を崩した」という事例は珍しくありません。
薬を飲んでいる方は「お酒はできるだけ控える」が基本です。


今日からできるお酒との付き合い方|心不全予防のために

  • 飲酒量を手帳やアプリで記録する
  • 週に2日は休肝日をつくる
  • 会食では「最初の1杯まで」と決める
  • ご家族と「飲まない日」を一緒に設定する

こうした小さな工夫が、心不全予防につながります。


まとめ

お酒は楽しみのひとつですが、心不全にとっては大きなリスク因子です。
純アルコール量が1日20g未満が目安ですが、心不全の方は医師に相談しながら、あなたに合ったお酒との距離感を見つけることが望ましいです。

毎日の飲酒習慣を見直すことが、未来の心臓を守る第一歩です。今日からできることを一つ決め、ご家族と一緒に取り組んでみましょう。


参考文献

  • 日本循環器学会・日本心不全学会.心不全治療ガイドライン(2025年改訂版).2025.
  • WHO. Global status report on alcohol and health.
  • Larsson SC, et al. Alcohol consumption and risk of heart failure. Eur Heart J. 2015.
  • GBD 2022 Alcohol Collaborators. Population-level risks of alcohol consumption. Lancet. 2022.

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