心不全患者さんの日常生活で気をつけたいこと【理学療法士が解説】

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はじめに

心不全と診断されると「運動」「食事制限」などに気をつける必要があることはよく知られています。
しかし、実際には 日常生活の小さな習慣 が心不全の安定や悪化の予防に大きな影響を与えます。

この記事では、患者さんとご家族に向けて「心不全患者さんが日常生活で気をつけたいこと」を、自律神経やストレスの影響も含めてわかりやすく解説します。


自律神経と心不全の関係

自律神経は「交感神経(活動モード)」と「副交感神経(休息モード)」から成り立ちます。
心不全患者さんでは交感神経が優位になりやすく、これが 心拍数増加・血圧上昇・不整脈の発生 につながります。

  • ストレスが強いと → 交感神経が優位 → 心臓への負担が増加。
  • リラックスできると → 副交感神経が働く → 心臓が休める。

つまり、日常生活で ストレスを減らし、自律神経のバランスを整えること が心不全の悪化予防には欠かせません。


睡眠を整える

心不全患者さんからよく聞かれるのが「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」といった睡眠の悩みです。
これは自律神経の乱れや夜間の呼吸苦、利尿薬による夜間頻尿が関係しています。

睡眠を改善する工夫

  • 寝室環境を整える:温度20〜24℃、湿度50〜60%。枕は体格に合ったものを使用。
  • 寝る前の習慣:就寝1時間前からスマホ・テレビを避ける。眠れないときは無理せず一度ベッドを出て気分転換。
  • 生活リズム:起床時間を一定にし、日中の軽い運動で体内時計を整える。
  • 夜間頻尿の対策:夕方以降の過剰な水分摂取を控える。利尿薬の内服時間を医師に相談。

睡眠セルフチェックリスト

  • 寝室は快適な温度・湿度になっているか?
  • 寝る直前にスマホを見過ぎていないか?
  • 日中に少しでも体を動かしているか?

入浴で気をつけたいこと

入浴はリラックス効果がある一方で、血圧の急な変動が心不全患者さんにはリスクになることがあります。

安全に入浴するための工夫

  • お湯の温度:38〜40℃のぬるめが目安。
  • 入浴時間:10分以内、半身浴(みぞおちまで)がおすすめ。
  • 浴室環境:冬は脱衣所や浴室を暖めてヒートショックを防ぐ。
  • タイミング:食後すぐは避け、就寝の1〜2時間前がベスト。

入浴セルフチェックリスト

  • お湯の温度はぬるめ(38〜40℃)になっているか?
  • 入浴時間は10分以内に抑えているか?
  • 入浴前後に急に立ち上がっていないか?
  • 冬場は脱衣所・浴室を暖めているか?

ストレス管理とリラックス

ストレスが強いと交感神経が優位になり、心拍数や血圧が上がりやすくなります。

  • 深呼吸や軽いストレッチで気分を切り替える。
  • 趣味の時間を持つ。
  • 家族や医療者に不安を話す。

こうした小さな工夫が「心臓を休ませる時間」を作ることにつながります。


ご家族ができるサポート

心不全の管理は患者さん本人だけでなく、家族の支えが大きな助けになります。

  • 睡眠サポート:寝室の環境を整えてあげる、静かな環境をつくる。
  • 入浴サポート:浴室や脱衣所を暖める、入浴中の様子を見守る。
  • 記録の手伝い:体重・血圧・体調の変化を一緒に記録する。
  • 声かけ:「疲れたら休んでいいよ」と安心感を与える。
  • ストレス軽減:気軽に話を聞く、散歩や趣味に付き添う。

ご家族のサポートは、患者さんの安心感につながり、日常生活を安全に過ごす大きな力になります。


まとめ

心不全の管理は薬や食事だけでなく、 日常生活の過ごし方 がとても大切です。

  • 睡眠を整えて自律神経を安定させる。
  • 入浴は「ぬるめ・短時間・半身浴」で安全に。
  • ストレスを溜めすぎず、リラックスする習慣をもつ。
  • ご家族のサポートが安心と継続につながる。

無理をしない範囲で、少しずつ生活習慣を工夫することが「再入院を防ぎ、安心して生活を続ける第一歩」になります。

参考文献

  • 日本循環器学会・日本心不全学会.2025年改訂版 心不全治療ガイドライン.2025.
  • Florea VG, et al. The Autonomic Nervous System and Heart Failure. Circ Res. 2014.
  • Harris KM, et al. Psychological Stress in Heart Failure. Curr Heart Fail Rep. 2020.
  • Cowie MR, et al. Sleep-Disordered Breathing and Cardiovascular Disease. JACC. 2021.
  • El-Malahi O, et al. Physical activity and heart rate variability: a systematic review. PLOS ONE. 2024.

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