心不全を予防するには?生活習慣でできる7つの工夫【理学療法士が解説】          

心不全予防シリーズ
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はじめに

心不全は「入院と退院を繰り返しやすい病気」として知られていますが、実はその多くは生活習慣の積み重ねによって発症リスクを減らすことができます。

僕自身、臨床で心不全の患者さんを支援してきた経験から「ちょっとした生活習慣の差」が、その後の経過に大きな違いを生むことを実感してきました。

40〜60代で健康に関心のある方にとって、「どうすれば心不全を予防できるのか?」は気になるテーマではないでしょうか。                                       この記事では、理学療法士の視点から 心不全予防に役立つ7つの生活習慣 をわかりやすく解説します。今日からできる工夫を、一緒に確認してみましょう。


心不全を予防するために生活習慣が重要な理由

心不全は「心臓のポンプ機能が弱り、全身に血液を送りにくくなる状態」です。
高血圧や糖尿病、肥満、喫煙などの生活習慣病と深く関わっており、これらの病気や生活習慣をおろそかにしている人は気をつけている人に比べて、心不全の発症リスクが2〜3倍に増えることが分かっています。

つまり「日常生活の過ごし方」が、心不全を防ぐための第一歩になるのです。                心不全は一度なってしまうと完治が難しく、息苦しさや体の怠さから日常生活が損なわれやすくなるため、しっかりとした対策が必要です。


工夫① 運動習慣を身につける

運動は心臓を守る最も効果的な方法の一つです。
適度な有酸素運動は血流を改善し、心臓への負担を減らすだけでなく、高血圧や糖尿病の予防にもつながります。

特におすすめは「ウォーキング」や「軽い筋トレ」です。激しい運動ではなく、無理のない範囲で継続することが大切です。
座りっぱなしの生活は心不全リスクを高めると報告されているため、日常の中で「エレベーターではなく階段」、「一駅分歩く」といった小さな工夫を積み重ねましょう。

僕がリハビリで患者さんと運動するときに意識しているのは、「会話ができるくらいのペース」です。誰かと会話をすることで運動も楽しく取り組めますし、会話が続かなくなった時は、心臓に無理が生じている目安にもなります。


工夫② 高血圧・糖尿病などの生活習慣病を放置しない

高血圧や糖尿病などの生活習慣病は心不全の最も大きな原因のひとつです。                  
症状がなくても血管や心臓には静かに負担がかかり続けています。
定期的な健康診断を受け、必要であれば薬物治療も含めてしっかり管理していくことが大切です。

また別記事で生活習慣や生活習慣病については詳しく解説したいと思います。

工夫③ 減塩とバランスのよい食事

「そんなに減らすなんて無理…」と感じる方もいると思いますが、出汁・酢・香辛料を使えば味気なさを感じにくく、減塩が続けやすくなります。

塩分の摂りすぎは血圧上昇につながり、心不全リスクを高めます。
厚生労働省の目標では、1日の塩分摂取量を 男性7.5g未満、女性6.5g未満 に抑えることが推奨されています。

「そんなに減らすなんて無理…」と感じる方もいると思いますが、出汁・酢・香辛料を使えば味気なさを感じにくく、減塩が続けやすくなります。

具体的には…

  • 調味料は「かける」より「つける」
  • 出汁や香辛料を使って風味を工夫
  • 外食や加工食品は栄養成分表示をチェック

さらにタンパク質や野菜をバランスよく取り入れることで、筋肉量の維持や動脈硬化の予防にもつながります。

僕のおすすめは「味噌汁の塩分控えめ+具だくさん」。塩分を減らしても満足感が出やすいです。


工夫④ 体重管理と肥満予防

肥満、特にお腹まわりに脂肪がつく「メタボリックシンドローム」。                   略してメタボは心不全の原因にもなります。
BMI が25を超えると、高血圧・糖尿病・脂質異常が重なりやすくなり、心臓への負担が加速します。

体重は毎日同じ条件(朝のトイレ後など)で測るのがおすすめです。急な増加が続くと、生活習慣の乱れや体に水分がたまってきたサインかもしれません。

短期間で急激に体重を落とすのではなく、「食事+運動」で少しずつ改善するのが基本です。

BMIを計算してみましょう。BMI=体重(kg)÷身長(m)×身長(m)で求められます。                 またBMIで検索すれば、ご自身の体重、身長を入力するだけですぐに計算してくれる       サイトもあります。


工夫⑤ 睡眠とストレス管理

睡眠不足や不規則な生活は、自律神経を乱し、心臓に負担をかける原因になります。
特に「夜更かし」「休日の寝だめ」はリズムを崩しやすいため注意が必要です。

快眠のための工夫:

  • 就寝前はスマホやテレビを避ける
  • 就寝・起床時間を一定にする
  • 寝室の温度(20〜24℃)、湿度(50〜60%)を快適に保つ

「いびきが大きい」「日中に強い眠気がある」といった症状がある場合は、病気が隠れているサインかもしれません。気になる方は早めに病院を受診しましょう。


工夫⑥ 飲酒は“適量”を意識して、心臓にやさしい習慣を

お酒は気分を和らげたり、交流の場で楽しんだりと日常に潤いを与える一方で、飲みすぎは血圧上昇や心臓への負担につながります。


「少しだけなら大丈夫」と思いがちですが、毎日の積み重ねが心臓に影響を与えるのです。
純アルコールで1日20g未満(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)を目安にし、休肝日を設けることをおすすめします。

工夫⑦ 禁煙は“最大の予防薬”になる

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は血管を傷つけ、動脈硬化や心筋への酸素不足を引き起こします。
「少しだけなら…」と油断しがちですが、喫煙は心不全を悪化させる最大の危険因子のひとつです。
禁煙を始めることで血圧や脈拍は数日で安定し、数年以内には心血管リスクが大幅に低下すると報告されています。
“今からやめても遅くない”——禁煙は最も強力な予防策の一つなのです。

まとめ

心不全は誰にでも起こりうる病気ですが、運動・生活習慣病・減塩・体重管理・睡眠・飲酒・禁煙という7つの工夫で予防の可能性を高めることができます。
「小さな工夫を積み重ねること」が、未来の安心と健康寿命の延伸につながります。


参考文献

  • 日本循環器学会・日本心不全学会.心不全治療ガイドライン(2025年改訂版).2025.
  • 厚生労働省.e-ヘルスネット(生活習慣病予防・健康づくり).https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp
  • Whelton PK, et al. 2017 ACC/AHA/AAPA guideline for high blood pressure. J Am Coll Cardiol. 2018;71:e127–248.
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  • WHO. Guideline: Sodium intake for adults and children. Geneva: WHO; 2020.
  • Chiuve SE, et al. Diet and lifestyle and the risk of heart failure. JACC Heart Fail. 2017;5(5):375-382.
  • Walker WH, et al. Sleep and cardiovascular disease. Sleep. 2015;38(6):843-844.

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