入院中にベッドで横になっていると『これからどうなるんだろう?』、
『治療にいくらかかるんだろう?』、『どのぐらい入院するんだろう?』など様々な
不安に駆られることも多いと思います。
この記事では、医療現場で心不全の患者さんと関わってきた理学療法士の立場から、
入院中や退院が近づいたときに、ぜひ知っておいてほしいことをお伝えします。
こんな悩みを持つあなたへ
・「先生から退院と言われたけれど、正直まだ不安しかない」
・「心不全は繰り返すと聞いた。自分に何ができるか知りたい」
・「医療費の支払いや、今後の生活費が心配で夜も眠れない」
この記事で分かること
・心不全で入院・退院するとき、多くの人が感じる不安の正体
・退院後の生活や再入院についての考え方
・お金や公的制度をどう考えればいいのかという全体像
記事は『正解を提示』するものではありません。
心不全とうまく付き合っていくための参考として見ていただければと思います。
心不全で入院すると、まず何が起きるのか
そもそも心不全って?
一言で言うなら『心臓が全身に血液を送るポンプとして機能が低下することで様々な症状が生じた状態』のことを指します。
そして、心不全は「一度治ったら終わり」という病気ではなく、体調や生活によって良くも
悪くもなる状態だと考えてください。
入院中に行われる治療の大まかな流れ
入院して数日は、心臓の負担をできるだけ和らげる目的で内服や酸素投与が始まります。
心臓の状態が落ち着いたら徐々に日常生活と同じように病院で生活を送りながら、リハビリテーションや栄養指導を受けて、運動能力の向上や心不全についての理解を深めていきます。
その後、日常生活が送れるまで体調が回復したら退院となります。
入院期間はどれくらいになることが多いのか
心臓の状態や患者の体力には個人差があり、具体的な期間は決まっていません。
なかには急いで退院をご希望される患者もいますが、心不全は再発を繰り返しやすい病気でもあります。入院をご自分の体と心不全について理解するための機会と捉え、治療に専念していただければと思います。
退院が近づいたとき、多くの人が感じる不安
「本当に家に帰って大丈夫なのか」という不安
入院中は生活のあらゆる面で看護師や介護福祉士といった医療、介護の専門家のサポートを受けられますし、心不全を再発しないための管理も徹底されているため安心した環境と言えます。
そのため、専門家のサポートが少ないご自宅では退院することに不安を感じる方も多いです。
特に心不全では歩くだけでも息苦しさを感じたり、疲れやすかったりもするので、『自宅での生活が送れるのか心配』というご意見はごく自然なことだと思います。
医師からの退院許可は言ってしまえば『自宅に帰っても大丈夫』という太鼓判でもあります。
まずは、ご自宅での生活で何が不安なのか医師や看護師、それ以外の病院スタッフに話してみてください。話してみるだけでも気持ちは軽くなりますし、その不安を解消するための方法について病院スタッフ側でお答えできることもたくさんあると思います。
退院後の生活は、どこまで制限されるのか
生活に関する制限についても、個人差があるため一律で『これをやってはいけない』というものはありません。しかし、心臓のことを考えて可能な限り避けた方がいいこともあります。
特に入浴や激しい運動は心臓に負担がかかりやすいです。
詳しくは別記事で紹介していますので、こちらをご確認ください。
👉入浴で血圧はどう変化する?温度差・湯温・入浴時間の科学的データを徹底解説
👉【保存版】心不全で絶対に避けるべき運動5選と安全な運動のやり方【理学療法士が解説】
家族はどこまで介助すればいいのか
『在宅介護』や『生活支援』と言われるとハードルが高いものと受け取られやすいですが、必ずしも日常生活の全てを介助する必要はありません。
退院する前に入院されているご家族が『何ができて、何ができないのか』を看護師やリハビリ
スタッフ、介護福祉士に確認してみてください。
入院中は常に医療従事者が見ており、どういった介助が必要なのか把握しています。それを元にご自宅でどのように介護をすればいいのか適切なアドバイスも受けられます。
心不全は再入院を繰り返すって本当?
本当です。詳しくは次の項目で解説します。
なぜ心不全は再入院しやすいと言われるのか
心不全の患者が再入院を繰り返しやすい理由は、過度な運動、食生活や喫煙、飲酒などの生活習慣、ストレスなどの精神的負担などが積み重なり心臓へ負担をかけてしまうためです。
心不全を再発する原因は患者によって様々であり、その原因が一つとも限りません。なので、退院する前には心不全について理解を深めておく必要がありますし、退院後は再発させないためのセルフコントロールが重要になってきます。
心不全に悪影響を与える生活習慣についてはこちらで詳しく解説しています。
👉 心不全とお酒|本当に「少量なら大丈夫?」医療者がわかりやすく解説 🍷
👉 心不全予防と禁煙|たばこが心臓に与える危険とは?【理学療法士が解説】
👉 心不全予防の食事|減塩と栄養バランスの正しい実践法【理学療法士が解説】
再入院を防ぐために「いきなり完璧」は必要ない
心不全の再発予防のために日常生活で気をつけることは多岐に渡ります。
しかし、いきなり全てを一度に良くしようとすると取り組みが中途半端になってしまいますし、頑張りすぎてしまうとかえって精神的負担をかけてしまう恐れがあります。
まずは簡単にできることから一つ選び、始めてみましょう。
その積み重ねがやがて再入院を予防するための礎になると思います。
心不全の再発予防のための生活習慣について、こちらの記事にわかりやすくまとめています。
👉心不全を予防するには?生活習慣でできる7つの工夫【理学療法士が解説】
お金のことが不安になったときに、まず知っておいてほしいこと
心不全の治療費は「全部自己負担」ではない
病気で入院したら『治療費』について悩まれる方も多くいらっしゃいます。
入院費は一律にこのぐらいの金額というものがなく、治療に必要な処置や検査にかかる費用を
合算し、最終的な支払い額が決定します。そのため、『治療費がいくらぐらいになるのか?』
という不安はごく自然なものです。
日本の国民健康保険では医療費は1〜3割負担ではありますが、仮に心臓の手術をして入院費込みで50万円かかるとした場合、支払額は最大で15万円になります。
※あくまでも一例であり、実際の自己負担額は、年齢や所得区分によって異なります。
しかし、『高額療養費制度』を活用することで15万円の支払額をさらに大きく減額することも可能です。
また高額療養費制度以外にも公的制度には様々な種類があり、それらを上手に活用することで金銭的負担はかなり軽減することができます。
高額療養費制度について詳しく知りたい方はこちらの記事で解説しています。
👉高額療養費制度|心不全治療の自己負担を軽減する仕組み
入院中・退院後で使える公的制度の全体像
金銭的負担を軽減する公的制度には様々なものがあります。
・高額療養費制度
・障害年金
・傷病手当
・介護保険
・医療費控除
特に『介護保険』は条件を満たせば金銭的負担だけではなく、訪問看護、デイサービス、
福祉用具レンタルといった生活を支えるためのサービスを受けることもできます。
これらの公的制度を理解して上手に活用することで、お金や退院後の生活の不安を大きく減らすことができると思います。
日本の医療に関する公的制度をまとめた記事はこちらでわかりやすく解説しています。
👉 心不全とお金の基礎知識|医療費・制度・給付金をまとめて解説
詳しく介護保険について詳しく知りたい方はこちらでわかりやすく解説しています。
👉 心不全でも介護保険は使える?利用条件・費用・サービス内容を徹底解説【理学療法士】
この記事でお伝えしたかった一番大切なこと
退院は「ゴール」ではなく「次の生活のスタート」
私は『入院は人生の分岐点』だと考えています。
病気には治療や入院で綺麗に症状が改善するものもあれば、上手に付き合う必要のあるものも
あります。特に心不全は上手に付き合っていく必要がある病気の代表例でもあります。
なので退院とは治療のゴールではなく、次の生活のスタートと言えます。
退院後は心臓に負担をかけ過ぎず、ご自分で体調を管理していかなければなりません。
上手に体調管理ができなければ再び心不全になりやすいです。
しかし、ご自分の体の状態や公的制度による保障をしっかり把握していれば、不安を和らげ、
仮に心不全になったとしても身体的・精神的・金銭的な負担はグッと減らすことができると考えます。
不安を感じるのは、ちゃんと向き合っている証拠
病気になれば誰しもネガティブな思考に囚われやすくなります。
そういった状態では視野が狭まり、さらに悲観的なことばかり考えてしまう
負のスパイラルに陥ってしまいます。
ですが、不安を感じることは悪いことではありません。しっかりと現実に向き合おうとしている気持ちの表れであると思います。
私はそんな方に視野を広げるためのヒントになればと思い、このブログを始めました。
このブログ記事で読まれた方の不安を少しでも和らげることができれば幸いです。
次に読むべき記事のご案内
- ▶ まずは何から取り組んでいいのかわからなくて不安な方へ
【保存版】心不全で絶対に避けるべき運動5選と安全な運動のやり方【理学療法士が解説】 - ▶ 治療や入院費などのお金や退院後の生活について不安な方へ
心不全とお金の基礎知識|医療費・制度・給付金をまとめて解説 - ▶ 退院後に心不全を繰り返すことが不安な方へ
心不全を予防するには?生活習慣でできる7つの工夫【理学療法士が解説】
最後に自己紹介
筆者プロフィール
私は総合病院・個人病院に勤務している10年目の理学療法士「ゆうゆう」と申します。
今までに病棟で勤務しており、入院中の心不全やそれ以外のご病気となった患者のリハビリや
退院支援に関わってきました。
業務の傍で「心臓リハビリテーション指導士」や「3学会合同呼吸療法認定士」の資格を取得し、専門的立場から入院患者やそのご家族へアドバイスなどをさせていただいています。
情報の根拠について
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免責・スタンス
当ブログサイト医師に代わって診断や治療に関する内容について指示する趣旨はございません。
読んでいただいた方の不安を和らげ、情報を整理するためのツールとして活用していただければ幸いです。

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