再入院を防ぐ!心不全のサインとセルフモニタリング【理学療法士が解説】

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はじめに

心不全は「入院と退院を繰り返しやすい病気」です。実際に心不全の患者さんの30日以内の再入院率は約2割前後と報告されており、他の病気と比べても高い水準です。
再入院を繰り返すと、心臓だけでなく体全体や生活の質(QOL)にも大きな影響が出てしまいます。

この記事では、

  • なぜ心不全は再入院率が高いのか
  • 入退院を繰り返すとどんなことが起きるのか
  • 再入院を防ぐために日常生活でできるセルフモニタリング

について、患者さんとご家族にわかりやすく解説します。


なぜ心不全は再入院率が高いのか?

退院後の「脆弱期(ぜいじゃくき)」

心不全で入院をすると体力が低下しやすいです。理由は少しの運動でも息苦しさを感じるため、ベッド上で過ごす時間が増え、体力や筋力が低下しやすく、食欲低下や睡眠の乱れなども生じるためです。

そのため病気の治療を終えて退院しても、日常生活を送るために必要な体力や筋力が不足している場合が多いです。この退院直後の体全体が弱っている状態のことを「脆弱期」といいます。
この時期は感染症や転倒、再びの心不全悪化
など、あらゆる再入院のリスクが高まるのです。

病気そのものが再燃しやすい

そもそも心不全は「体に水分がたまりやすい病気」です。
塩分や水分の摂りすぎ、感染、薬を飲み忘れるといった小さなきっかけで病気が進行し、むくみ・息切れ・体重増加といった症状の出現によって再入院につながります。

高齢・併存症・フレイル

心不全の患者さんは高齢であることが多く、高血圧・糖尿病などの生活習慣病などを一緒に持っている方が多いです。こういった患者さんは体力や筋力が落ちやすく、入院・再入院のリスクがぐんと上がります。

安静による体力低下

数日間の安静でも、体力や筋力は低下してしまいます。これによって退院後も日常の活動量が低下し、再びうっ血や体調悪化を招き、再入院するという悪循環を生みます。


入退院を繰り返すと何が起きるのか?

生命予後が悪化する

生命予後とは病気の経過がどのぐらい生命活動に影響を与えるのかを示し、入退院を繰り返すほど生命予後が悪い死亡するリスクが高くなるとされています。

身体機能の低下

入院のたびに体力・筋力が落ち、転倒や日常生活動作(ADL)の低下につながります。特に高齢者では「入院のたびに歩けなくなる」ケースも少なくありません。

QOL(生活の質)の低下

息切れや息苦しさで外出が減り、気分も落ち込みやすくなります。再入院を繰り返すことで「また入院かもしれない」、「外出や旅行ができなくなるかもしれない」という不安が強まり、生活の楽しみも制限されがちです。

家族や介護への負担増

再入院が増えると、通院や看病、介護の負担が家族に重くのしかかります。社会的・経済的な負担も少なくありません。


再入院を防ぐためのセルフモニタリング

心不全では「自分の体調の小さな変化に気づくこと」がとても大切です。以下のポイントを毎日チェックしましょう。

毎日チェックしたい3つの指標

心不全が落ち着いている時の体重や血圧、脈拍数を把握していることは、セルフモニタリングにおいて重要です。普段の状態を知っておくことで、異常にいち早く気づくことができます。

  • 体重:2〜3日で2kg以上の増加は注意
  • 血圧・脈拍:極端な上昇・下降、不整脈がある場合は要相談
  • 症状:息切れ、足のむくみ、運動時や夜間の息苦しさ、動悸

体重はわかりやすい指標のひとつです。時間帯によって体重にはばらつきがあるため、毎日決まった時間帯に測るようにしましょう。


早期発見が重要な心不全増悪の兆候

次のような症状があったら、心不全悪化のサインかもしれません。

  • 体重の急な増加:2〜3日で2kg以上の増加は水分貯留のサイン
  • 足のむくみ:靴下の跡が強く残る、夕方になるとふくらはぎがパンパンしている
  • 息切れの悪化:階段や歩行時だけでなく、横になったときにも息苦しい
  • 夜間の呼吸困難:夜中に息苦しくて目が覚める、枕を高くしないと眠れない
  • 動悸や不整脈:脈が速い、乱れる感覚がある
  • 食欲低下・だるさ:腸や全身のうっ血によって消化吸収に影響がでることがあります

このような症状を発見した場合は、速やかに病院を受診することをお勧めします

ご家族ができるサポート

  • 記録を一緒につけてあげる
  • 入浴や運動のときに体調を見守る
  • 「無理しなくて大丈夫」と声をかける
  • 受診や薬の管理をサポートする

ご家族の協力があることで、患者さんは安心して生活を続けることができます。また、一緒に日々の記録をつけることで、病気の進行を早期発見できれば入院を回避できる場合もあります。


まとめ

心不全は再入院率の高い病気ですが、日々のセルフモニタリングで小さなサインに早く気づけば、再入院を防ぐことができます。

  • 退院直後は「脆弱期」で特に注意しましょう
  • 入退院を繰り返すと体も生活も弱ってしまう
  • 体重・血圧・症状を毎日セルフチェック
  • ご家族のサポートが安心につながる

「今日はいつもと違うな」と気づけることが、心不全と付き合っていく大切な第一歩です。


参考文献

  • 日本循環器学会・日本心不全学会.2025年改訂版 心不全治療ガイドライン.2025.
  • Krumholz HM. Post-hospital syndrome — an acquired, transient condition of generalized risk. N Engl J Med. 2013.
  • Piepoli MF, et al. Exercise training in heart failure: from theory to practice. Eur J Heart Fail. 2011.
  • Harris KM, et al. Psychological Stress in Heart Failure. Curr Heart Fail Rep. 2020.

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