はじめに
心不全を予防するには、薬だけでなく生活習慣の見直しが欠かせません。
特に「体重管理」は、心臓を守るための大切なポイントです。
結論から言えば、適正体重を維持することが心不全予防の第一歩です。
この記事では、肥満と心不全の関係、体重管理の方法をデータと臨床経験をまじえて解説します。
心不全と肥満の関係|なぜ太ると心臓に負担がかかるのか
肥満は、高血圧・糖尿病・脂質異常症を悪化させ、心臓への負担を増やします。
体が大きくなると、心臓はより多くの血液を送り出す必要があり、その結果心臓の筋肉が厚く硬くなる心肥大があります。心肥大は全身へ血液を送りにくくし、心不全へつながります。
大規模研究でも、BMI(体格指数)が高いほど心不全発症率が上昇することが示されています。
臨床の現場でも「体重増加と息切れ・むくみの悪化が連動する」ケースを多く経験しています。
だからこそ、日々の体重管理が重要です。
心不全リスクを高める肥満度の指標|BMI・腹囲をチェック
体格を評価する基本は BMI(体重kg ÷ 身長m²) です。
日本肥満学会では BMI25以上を肥満としていますが、WHOの報告ではアジア人ではBMI23以上から心血管リスクが増えるとされています。
また、お腹まわりの内臓脂肪の指標として「腹囲」が使われます。
- 男性:85cm以上
- 女性:90cm以上
これは「内臓脂肪型肥満」の目安で、動脈硬化や心不全を進めやすいことが知られています。
家庭でも体重計やメジャーで簡単にチェックできます。
ご家族で「毎週体重チェック日」を決めると習慣化しやすいです。
体重管理の基本|心不全予防のための減量ステップ
急激な減量は心臓に負担をかけるため避けましょう。
1週間で0.5〜1kg、1か月で2〜4kgを上限に減らすことが安全です。
食事
- 減塩を意識(1日6g未満)
- 主食・主菜・副菜を揃える
- 腹八分目を心がける
運動
- 会話できるペースのウォーキング
- 椅子からの立ち座りなど軽い筋トレ
- 週150分を目安に、分割してもOK
睡眠・ストレス管理
- 不眠や強いストレスは過食や体重増加につながります。
臨床経験でも、「食事記録や散歩習慣がある方」は体重が安定し、再入院が少ない印象です。
無理なく続けられる工夫を見つけましょう。
肥満と生活習慣病の悪循環|心不全を防ぐにはまとめて対策
肥満は高血圧・糖尿病・脂質異常症を悪化させ、心不全リスクをさらに高めます。
これらが重なると、リスクは数倍に増加すると報告されています。
臨床でも「複数の生活習慣病を抱えた方」は、心不全での入退院を繰り返すケースが多く見られます。
ご家族と一緒に「食事・運動・生活リズム」を整えることが最大の予防策です。
今日からできる体重管理チェックリスト
- 毎日体重を測って記録しているか
- BMI・腹囲を定期的に確認しているか
- 外食・加工食品を控えているか
- 週150分の軽い運動を続けているか
- 睡眠リズムを整えているか
ご家族と一緒にチェックすると、習慣化しやすいです。
まとめ
肥満は心臓に大きな負担をかけ、心不全リスクを高めます。
適正体重を維持することは、シンプルで確実な予防法です。
減塩とバランスの良い食事、会話できるペースの運動、毎日の体重記録。
その積み重ねが未来の心臓を守ります。
今日からご家族と一緒に「できること」から始めましょう。
参考文献
- 日本循環器学会・日本心不全学会.心不全治療ガイドライン(2025年改訂版).2025.
- 日本肥満学会.肥満症診療ガイドライン.
- Emerging Risk Factors Collaboration. Diabetes, BMI and vascular risk. Lancet. 2010.
- WHO. Obesity and overweight fact sheet.


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