理学療法士は本当に飽和するのか?

医療者向け(資格・キャリア)

― 2040年需給推計から見る「世代ごとに異なる影響」―


なぜ今「PT 飽和」が検索されているのか?

最近、

「理学療法士は将来余る」

「PTは2040年に仕事がなくなる」

といった言葉を目にする機会が増えています。

SNSや動画、まとめ記事でも

「PT 飽和」 という表現が半ば定説のように使われることもあります。

ただ、ここで立ち止まって考えたいのは、

多くの理学療法士が本当に恐れているのは

「明日突然仕事がなくなること」なのか、という点です。

実際には、

  • 40代・50代になっても今の働き方を続けられるのか?
  • 年齢を重ねたとき、居場所は残っているのか?
  • 給与や役割が下がっていくのではないか?

といった、将来の自分の姿が見えなくなる不安が、

「飽和」という言葉に重なっているケースが多いように感じます。

この記事では、

  • 「飽和」と言われる根拠は何なのか
  • 実際に起こりそうな変化はどんなものか
  • 影響を受けやすい人と、そうでない人の違いはどこにあるのか

これらを 公式データと構造の視点から整理していきます。


第1章|「理学療法士は2040年に余る」という話の出どころ

① 需給推計とは何か

「2040年に理学療法士が余る」という話の多くは、
厚生労働省 が公表している医療従事者の需給推計を根拠にしています。

これは、

  • 人口構成の変化
  • 医療・介護ニーズの将来予測
  • 養成校からの供給数

などをもとに、
「将来的にどれくらいの医療職が必要になりそうか」を試算したものです。

この推計では、今後理学療法士・作業療法士は
供給数が需要数を上回る可能性があると示されています。

② 数字が独り歩きすると何が起こるか?

このとき、よく切り取られるのが
「供給が需要の約1.5倍」といった数字です。

ただし、この数字は「全国平均・単純計算」であり、
理学療法士(PT)と作業療法士(OT)を合算した場合に
将来的に供給数が需要数を上回る可能性があるとのことです。

そのため、

  • 地域差
  • 分野差(病院/在宅/施設)
  • 年齢構成や働き方の違い

といった現場の要素は、ここでは十分に反映されていません。

実際には、都市部では求人倍率の低下など「飽和の兆し」が見られる一方で、
地方や過疎地では、いまなお人手不足が続いている地域もあります。

このように、「全国一律で余る」というより、
地域ごとの偏りが大きいというのが実情です。

データ自体は事実でも、どう解釈するかで意味は大きく変わる。
まずはこの前提を共有しておく必要があります。

こうした構造変化は、
実際には「転職すべきかどうか」よりも
「どんな条件が重なると悩みやすくなるか」という形で表れます。

👉 地方で理学療法士が転職に悩みやすい理由を、構造から整理した記事はコチラ
  地方で理学療法士が転職に悩む理由|働き方のリアルと“後悔しない選択肢”とは? 


第2章|不安が広がる本当の理由は「人口減少」ではない

① 人口減少はすでに織り込み済み

日本の人口が減少していること自体は、目新しい話ではありません。

  • 総人口は減少局面
  • 高齢者数は一定時期をピークに減少へ
  • 75歳以上人口も永遠に増え続けるわけではない

これらは、すでに国の推計の前提条件として織り込まれています。

つまり、人口減少=即仕事がなくなる
という単純な図式ではありません。

② 問題は「働き方の構造が変わること」

不安の正体は、人口そのものよりも

医療・介護の提供構造が変わることにあります。

  • 病院完結型医療の限界
  • 在宅医療・地域包括ケアへのシフト
  • 医療機関に求められる役割の変化

これに伴い、

セラピストに求められる働き方や役割も変わっていく

という点が、本質的なポイントです。


第3章|影響は一律ではない|世代ごとに異なる現実

① 20代PTに起こりやすいこと

20代の理学療法士は、

  • 学び直しがしやすい
  • 分野転換のコストが低い
  • 環境変化への適応力が高い

という点で、構造変化の影響を受けにくい世代でもあります。

一方で、

  • 「どこでも通用する」と思ってキャリア設計をしない
  • 受け身のまま年数を重ねる

といった選択をすると、後年になって差が出やすい側面もあります。

② 30〜40代PTに起こりやすいこと

この世代は、

  • 家庭
  • 役職
  • 年収

といった要素が絡み合い、「動けるが、決断が重い」という特徴があります。

環境を変えたい気持ちはあっても、

  • 収入を下げられない
  • 家族の事情で地域を動けない

といった制約が増える時期でもあります。

③ 50代以上PTに起こりやすいこと

最も影響を受けやすいのは、50代以降の理学療法士です。

理由は能力ではありません。

  • 体力的な問題
  • 管理・教育ポストの限界
  • 現場配置とのミスマッチ

といった 構造的な要因 が重なりやすいからです。

また、多くの医療機関では昇給カーブが緩やかになり、
一定の年齢で給与が頭打ちになるケースも少なくありません。

経営の視点では、人件費や配置のバランスを考えざるを得ない場面もあり、
こうした事情が、結果的に働き方の選択肢を狭めてしまうことがあります。

ここで重要なのは、

「誰が危ないか」ではなく

「どんな条件が重なると厳しくなるか」

という視点です。


第4章|「選別される」という言葉の正体

① 淘汰されるのは誰か?という誤解

「選別」「淘汰」という言葉は、個人の能力競争を想像させがちです。

しかし実際には、

  • 努力不足
  • 知識不足

だけで説明できる話ではありません。

② 実際に起こりやすいのは「配置のズレ」

多くの場合、問題になるのは、

  • 働く場所
  • 人生フェーズ
  • 評価される仕組み

ズレ です。

能力があっても、

  • 評価されにくい場所にいる
  • 自分のライフステージと合わない働き方を続ける

ことで、苦しくなってしまうケースは少なくありません。


第5章|じゃあ、どう考えればいいのか?

ここまでを踏まえると、

「飽和するか、しないか」

という二択で考えること自体が、

あまり意味を持たないことが分かります。

重要なのは、

  • 自分の世代
  • 家庭・生活条件
  • 働く場所の構造

をどう組み合わせて考えるかです。

今すぐ転職する必要はありません。

ただし、何も知らないまま年数だけを重ねることは、
リスクになり得ます。


まとめ|この問題で後悔しにくくなるための視点

  • 飽和論は、不安を煽るための言葉ではない
  • 構造を知れば、過剰に恐れる必要はない
  • 判断材料を持つことが、最大の防御になる

理学療法士の将来は、

「一律に暗い」「一律に安泰」

そんな単純なものではありません。

自分の立ち位置を理解し、選択肢を知っておくこと。

それが、後悔しにくいキャリアにつながります。


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