💡この記事は私の思いが詰まっていて長文となっていますが、重要なポイントを押さえていますので、気になるところから読み進めてください。
💡このブログ記事は、以下の方を対象としています。
・退院後に感じやすい「体調の不安」、「家族の不安」、「社会とのつながり」といった
悩みを整理したい方。
・家族視点から心不全の治療を終えた家族を自宅で受け入れるための不安を
軽減したい方。
病状が落ち着き、主治医から退院の許可をもらったときに、次のような不安はありませんか?
「また急に息苦しくなったらどうしよう…」
「症状は落ち着いたけど、自宅での生活に不安を感じる…」
「心不全について、いろいろ教えてもらったけど自宅で実践できるだろうか…」
この不安はごく自然なことだと思います。
病院では常に医師や看護師が病気を管理し、何かあればすぐに対応できる環境が整っていました。しかし、自宅では患者やその家族で体調管理をしなければならないため、退院を素直に喜べないという方も多くいました。
退院は「終わり」ではなく「始まり」
退院=治った、ではない理由
心不全と診断された方にとって退院とは治療の終わりではなく、「上手に病気と付き合っていくための生活」が始まったことを意味します。
そもそも心不全では、生活習慣(塩分、飲酒、喫煙、ストレスなど)や体調の変化が重なると、悪化しやすい傾向にあります。せっかく治療を終えて退院しても、生活習慣が乱れてしまうと心臓に負担がかかり、再入院につながる可能性があります。
そのため退院後の生活では、再入院をしないために生活習慣や体調管理を整えていくことが
望ましいです。
息切れや疲労感が続く医学的背景
心不全とは『心臓が全身に血液を送るポンプとしての機能が低下することで様々な症状が生じた状態』のことです。
さらに言うと心臓のポンプ機能が低下した状態とは、『全身に酸素を十分送ることができない状態』のことを指します。
人の体は運動するときに酸素をエネルギーに筋肉を動かします。しかし、心不全では全身への血流(=酸素の運搬)が十分でないことがあり、体が「酸素が足りない」と感じて呼吸が速くなるため、息苦しさとして自覚されやすくなります。
病院での治療は、心臓の働きを補助しながら負担を軽くし、症状を安定させることが主な目的です。そのため、退院後も心臓のポンプ機能が低下した状態が続き、日常生活でも息切れを感じやすくなります。
「自分だけおかしいのでは?」という誤解
「治療が済んだのに、まだ息苦しさが残っている」
「入院してから、前よりも疲れやすい」
といった声を退院後の患者からよく聞きます。
これは珍しいことではなく、心臓のポンプ機能の低下の他にも「入院生活」が大きく影響を
与えています。
入院生活を経験された方ならわかると思いますが、入院中は自宅での生活と比べて1日の活動量が大きく低下します。その上、動けば息苦しさや疲労感を感じやすいとなると、ベッドの上で1日を過ごす方も多くいました。
この状況が続くと『フレイル』や『サルコペニア』といった「入院生活で筋肉や気力が落ちてしまった状態」となり、退院しても日常生活を満足に送ることが難しくなります。
『フレイル』や『サルコペニア』について知りたい方はこちらの記事で解説しています。
👉 心不全とフレイル・サルコペニアの関係とは?【理学療法士が解説】
退院後に多い「体調」と「家族」の不安
体調の不安
退院後の不安で多いのは『また心不全で入院するのではないか?』と心不全の再増悪(悪化)に関する不安がよく聞かれます。
実際に日本国内の多施設登録研究(JROAD-DPCやJCARE-CARDなど)では”退院後1年以内に再入院する確率は約25〜35%”と約4人に1人が再入院している計算になります。
このデータは心不全を予防することがいかに難しいのかを同時に示すデータでもあります。
心不全が再増悪(悪化)する原因には、運動不足や生活習慣病、食塩の過剰摂取などさまざまな要因があります。そのため、網羅的な体調管理をしていく必要があります。
しかし、退院後は心不全の管理をご自分でしていかなければいけないため、『心不全の再増悪
(悪化)』が大きな不安になるのも自然なことだと思います。
自宅で心不全を予防するための方法はこちらの記事にまとめています。
👉 心不全を予防するには?生活習慣でできる7つの工夫【理学療法士が解説】
心不全になった方が安全に運動するための方法や注意してほしいことは、
こちらの記事で詳しく解説しています。
👉 心不全を予防する運動習慣とは?安全に続けるコツを解説【理学療法士が解説】
👉 【保存版】心不全で絶対に避けるべき運動5選と安全な運動のやり方
家族の不安
患者、家族を交えて病院スタッフから退院の話をさせていただくときに
「日常生活をどこまで支えたり、手伝えばいいのかわからない」と戸惑いを感じる家族の方は
とても多く感じます。
自宅で心不全を予防するためには、家族の協力はとても重要です。実際に減塩を目的とした栄養指導は、ご自宅で調理をされる方に行いますし、患者自身が気づいていない体調の変化も一緒に
生活をされている家族の方が気づきやすいこともあります。
心不全の予防のために家族へ依頼することが多くなればなるほど、自宅で受け入れる側の家族は
不安や責任感を感じる方が多いと思います。
しかし、家族だからと言って全てを負担する必要はありません。私たち医療従事者でさえも、
それぞれ役割分担をしているので、家族だけで背負い切れるものではないと考えます。
そこで私が考える退院後の重要ポイントを別の記事で詳しく解説していますので、
よろしければこちらの記事もお読みください。
👉 日常生活の注意事項:心不全患者さんの日常生活で気をつけたいこと
👉 心不全予防の最初の一歩:再入院を防ぐ!心不全のサインとセルフモニタリング
退院後にまず整えたい3つの軸
体調管理
心不全の再発予防を目的とした体調管理では『いち早く心不全の兆候を発見する』ことが
重要です。
入院中でも日常的に行っている体調管理には、①毎日の体重測定、②減塩食、③運動などがあります。比較的ご自宅でも取り入れやすく、オススメなのは『①毎日の体重測定』です。
理由は心臓が無理をしている時、初期段階で見られやすい症状のひとつに「足のむくみ」があります。足のむくみだけでは原因の判断が難しいこともありますが、「体重が1週間で2〜3kg
以上の急激な増加」を伴う場合は、早めにかかりつけ医へ相談することが勧められます。
※体調に不安がある場合は、自己判断せず医師へ相談してください。
初期段階で発見できれば、心臓にかかる負担を大きく減らし、入院を回避できる可能性もあります。
別の記事で具体的な体重管理の方法やそれ以外の体調管理についても
解説していますので、よろしければこちらの記事もお読みください。
👉 体重管理:心不全予防のための体重管理|肥満が心臓に与えるリスクとは
👉 減塩食:心不全予防の食事|減塩と栄養バランスの正しい実践法
👉 継続的な運動習慣:心不全を予防する運動習慣とは?安全に続けるコツを解説
👉 安全な運動の強さ:心不全を防ぐための運動強度の目安とは?会話ペースが鍵
公的制度の確認
退院後の生活で重要な要素は患者自身の体調はもちろんですが、「お金」と「介護」も
大きな悩みの種になります。
日本の公的制度は「申請主義」であり、生活を支援する制度は多数ありますが、申請しなければ利用することができません。
日本の公的制度を紹介するなら
・病院での窓口負担を減額できる「高額療養費制度」
・障害があって働けなくても金銭的支援が受けられる「傷病手当金」、「障害年金」
・自宅で生活しながら「介護サービス」や「医療サービス」を受けられる「介護保険」
こういった公的制度を利用するための条件はありますが、ひとつでも活用できれば生活を支える
大きな柱になります。まずはどんな公的制度があるのかを知り、自分や家族はどれを活用できるのか確認してみましょう。
公的制度のまとめ記事はこちらです。よろしければお読みください。
👉 心不全とお金の基礎知識|医療費・制度・給付金をまとめて解説
“相談できる人”を決めておく
体調のことや公的制度のことを知っていても、「日常生活では何から始めたらいいの?」、
「公的制度はどこで申請すればいいの?」など実際に何から行動を起こせばいいのか、
悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
この悩みを解決する方法のひとつに「専門家に聞いてみる」ということが良いと私は考えます。
例えば体調の悩みは主治医やかかりつけ医へ、公的制度については病院に在籍するソーシャルワーカーや各市町村に設置されている地域包括支援センターへ相談することが考えられます。
心不全の症状は人それぞれ違います。そのため患者にあった体調管理や活用できる公的制度は
それぞれ異なるため、自分自身や家族にあったものを探そうと思ってもなかなか難しいです。
困ったときに相談できる人を決めておくことは、患者自身やその家族の負担を大きく減らすことに繋がると考えます。
再入院を減らすために分かっていること
心不全増悪による再入院の原因は複数ありますが、主に生活習慣の乱れやストレスが重なった結果に起こりやすいとされています。
代表的なもので言えば
・過剰な塩分摂取
・運動不足
・生活習慣病の悪化
・飲酒や喫煙
・過剰なストレス
上記以外にも心不全増悪を助長するものは多数ありますが、逆に言うなら上手に付き合っていく工夫を積み重ねることで、体調を安定させながら日常生活を送れる可能性が高まります。
私は理学療法士なので、「運動療法」を介して患者と接することが多いのですが、
「息苦しいのに運動をしないといけないの?」、「運動をするともっとつらくなる」とおっしゃる方を多く見てきました。
やり過ぎれば心臓にとって悪影響はありますが、心不全患者にとって適度な運動は
「心臓への負担を減らし、日常生活を豊かにする」方法のひとつとなります。
別の記事で「オススメの運動」と「絶対避けるべき運動」を解説しています。
👉 オススメの運動:心不全患者さんのための安全な運動メニュー
👉 注意が必要な運動:心不全で絶対に避けるべき運動5選と安全な運動のやり方
「前と同じ生活」を目標にしなくていい理由
私は以前から「病気は人生の分岐点」だと考えています。
病気をすることによって今まで考えたこともない悩みを抱えたり、仕事を休業したりすることや入院して専門的な治療を受けることもあります。
心不全は、多くの場合「完治を目指すというよりも、うまく付き合いながら安定を保つことを目標にする病気」です。心不全になることで日常生活に制限が生じたり、症状が障害という形で残れば以前はできていたことも、病気になった後は難しくなるということもあります。
日常生活に生じる制限によって、精神的に落ち込む患者を多く見てきました。しかし、重要な
ことは「できないことよりも、できることに目を向けること」だと思います。
気持ちを切り替えることは確かに難しいことではありますが、退院後は「入院前と同じ生活」を目標にするのではなく、ご自分の体を労りながら新しいライフスタイルを目指していただきたいと思います。
この記事で伝えたいこと
✔️ 不安は自然なものです。
その不安はどこからくるものなのかを分析し、病気や公的制度の知識を身につけることで、
その不安を小さくすることはできます。
✔️ 心不全になった人もその家族も一人で悩みを抱え込む必要はありません。
私は病院で働いていて感じることは、ひとりの力でできることには限りがあります。
どんなに専門的な知識を持っていたとしても、個人の力には限界があります。病院でもいろんな医療従事者が協力することで入院患者の生活を支えることができるので、不安なときは抱え込まずにぜひご相談ください。お話をされるだけでも、その不安は軽くなると思います。

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